職員のほとんどが派遣スタッフ…!?
グループホーム(以下GH)で相対的に多いのですが、派遣に依存しているのをなんとかしたいという施設さんは意外といらっしゃいます。例えば在籍の職員が20名から30名弱いて、半数以上が派遣スタッフという話まで時に耳にします。
特に、施設がオープンして3年以内くらいのスタート時期の施設さんに多いかもしれません。入居数が少しずつ増えていくときに、それに合わせてピンポイントで人を採用するのは非常に難しいというのが背景として考えられます。臨機応変な増員がかけやすい派遣に頼るのは合理的でもあります。
しかし派遣スタッフは本来的には臨時職員。多すぎると人の入れ替わりが多くなるので、施設にぴったりの教育が進みにくくなります。
余談:派遣業が介護業界を支えている大事な一部であることに異論はありません。それは前職で派遣業にも携わらせていただいて痛感しました。
今から3年以上前。ケアマネ40代女性、Tさんの1ヶ所目の面接。ケアプランセンター(前編を参照)での面接を終え、2ヶ所目の面接先として来たのが『派遣依存から脱却したいグループホーム』でした。
派遣依存から脱却したいグループホーム
グループホームは9名の入居者さんを1単位(ユニット)としています。ここは3ユニットで最大27名の入居者さんが暮らせる場所でした。面接日のちょうど翌日に入居が18名になって2ユニット埋まる予定で、Tさんがもし入社して現場の介護スタッフの教育が進めば、3階のまだ空きのフロアに入居を増やしていくのを目指すイメージです。
在籍職員が30名弱。その中に派遣スタッフが多く含まれているとのこと。派遣の割合の明言は避けておられましたが、8月と9月で満了(派遣期間の終了での退職)が3名いるとのことでしたので、たしかに派遣スタッフが多めなのだろうとは感じました。3年前(当時の時点から数えて)にできた新しめの施設でしたので、やむを得ない状況だったのだと思います。
遠隔地に本社がある法人で、病院が母体の医療法人です。数年前から有料老人ホームやGHなどの介護施設を複数作って運営し始めたという経緯があります。
こういった本社が遠隔地にある介護施設のメリットは、もし本社の指揮や指導が現場感覚と合わなくても、離れているので現場の判断でうまくやりやすい点です。指導者の腕に自信があれば、素晴らしい環境です。Tさんに求められたのは施設長ではありませんが『施設ケアマネとして働きつつ、現場のメンバーを指導してあげてほしい』というものでしたから、現場経験も豊富なTさんとしては面白いお話でした。
反対に本社が離れているために予想されるデメリットとしては、費用のかかる改善や改革をしようと思ったときに、それを本社に説明し、決裁を得ることに手間や時間がかかりやすい点です。ただ、その点は面接官である現施設長が、Tさんと同年代で同性の女性なのでコミュニケーションが取りやすそうな点と、その施設長は同法人で勤務が長く、組織内での意見も通りやすそうな点で、Tさんにとって安心ですし今後の派遣スタッフからの脱却という目標達成も協力することで期待できそうでした。
ここがGHとしてややレアな点としては『看取り(みとり)まで』という法人の方針でした。つまり入居者さんがお亡くなりになるまでここに居ていただけるようにするといことです。特浴(機械浴)もあり、全介助(完全な寝たきり)の人も受け入れる方針です。ただし栄養制限のある人は受け入れられない、というルールでした。この『GHで看取りまでやる』という法人のスタイルは、最後のそのときが来るまで施設でやりきるべしという哲学、理念なのかもしれません。
この方針自体は素晴らしいものと感じる一方、スタッフが育っていないとGHの環境で看取りまでという難易度の高い介護はできないので、派遣スタッフが多そうな現状では少々怖いはずで、だからこそ派遣依存からの脱却が急務だったのでしょう。Tさんは施設管理者として現場を指導していた経歴もあり、改善や改革への挑戦というのもお好きでしたので、もしここをお選びになってもやりがいのある良いご縁になると思いました。
次の面接はそれから数日後の8月冒頭。曇り空で暑さが鈍い、それでも外を歩いていると蝉の大合唱で会話がかき消されんばかりの夏の日でした。
レインボーブリッジを封鎖しそうな医療法人の居宅ケアマネ
面接官の女性は面接開始して早々に言いました。
「ケースは動いているので、
サポートは期待してもらわない方がいい」
ドドンッ…!!!
よくある早期退職に『面接ではサポートすると言っていたのに、入社したら放ったらかしで仕事が分からず、学ぶ方法もなくてやむなく退職した』という話があります。他でたまに聞く、そんな入社前後のギャップを生みたくないので、面接の時点で明確に言ってくださったそうです。
「事件は会議室で起きているんじゃない…現場で起きているんだ!」
踊る大捜査線の映画版をご存知でない場合はすみません。映画1作目の時の青島刑事(織田裕二)の有名なセリフです。※レインボーブリッジ封鎖せよ、は映画の2作目。
この名ゼリフを彷彿とさせるような痛快な「ケースは動いているので、サポートは期待してもらわない方がいい」という説明で始まった面接でしたが、医療法人の居宅ケアマネをするのが、どういう仕事環境なのか1つの実例として非常に的確に説明してくださった面接でしたので、要点をご紹介します。
(以下9項目が切り口として要点であることは変わりませんが、居宅介護支援事業所それぞれで内容は違います。またどこの事業所なのか、の推定につながる説明は省いています。)
- 業務時間のうち、ざっくり5分の4はサービスの調整業務。残り5分の1がケアプラン作成に充てられる時間。
- マニュアル化されているので、それで学んでいただく方針。
- 常勤(正社員)はケースを35件、必ず持ってもらう。
- 電動自転車で利用者のご自宅等へ移動する。(車や原付ではない)
- 特定事業所加算2と4を取っている。違反しないように事務的なことに追われがち。そこ(事務処理の多さ)が負担だと言う職員もいる。4はターミナル(終末期。お亡くなりになることが近い)系の加算。
- 5人でここ(居宅介護支援事業所)をまわしている。土曜日は交代制。日曜は固定休。
- 24時間の輪番制で、ケータイ対応。加算の関係で必要。→これは、ここを利用している利用者さんから深夜も含めて急な相談やお問い合わせがあったときに、携帯電話の当番の人間が24時間体制で電話応対をする、というもの。
- 土地の特性に慣れていないと、地理的な面でアジャスト(適応)できるかは不安材料。
- ケース35名持っていても、入院なさったら保有ケースが減るので、減ったら営業努力で新規を獲得しないといけない。35名を維持することは重要な要件。
Tさんの選んだ道
Tさんの面接と面接の合間、移動の途中の大きな駅で、前編で紹介した総苑長とお電話でお話し、Tさんが内定である旨をお聞きした際は、まるで自分のことのように嬉しく感じました。
実は、総苑長との面接後に、そのままの流れでケアマネの専用の執務室を見せていただいていたのです。この職場見学でTさんが感動していたポイントが2つあります。
1つは、新しい施設の中の、ケアマネだけが業務を行う整ったオフィス環境という点です。ケアマネ専用オフィスは、ケアプランセンターであれば何も珍しいことではないのですが、以前までは施設代表番号への電話が頻繁に鳴り、ケアマネ宛じゃない電話も頻繁に取らないといけない環境でお仕事をされていたので、仕事に快適に集中できる環境があることに感動されていました。
もう1つは、これが大きかったのですが、このケアプランセンターの責任者の男性が、ベテランで、非常に丁寧な、明るい表情の、信頼できそうな人物だったことです。職場見学という位置づけでしたが、立ち話ではあるもののしっかりTさんと責任者の男性がコミュニケーションをとれる時間をいただけ、お互いの人柄を確認し合えたのは幸運でした。
今も、Tさんはこの『ケアプランセンター』で元気に活躍されています。
1.アクセス(通勤のしやすさ)
2.待遇面(給与、福利厚生、休日数)
3.成果の上げやすさ(職歴との相性、業務ツール、人間関係、教育体制、勤務時間、休憩場所、お客様の数や状態、配属先リーダーのレベル、会社の競争力、経営者の熟練度)
上記3項目が比較のポイントと考えています。
①女帝?のいる法人のケアプランセンター
②派遣依存から脱却したいグループホーム
③レインボーブリッジを封鎖しそうな医療法人の居宅ケアマネ
あくまでTさんにとっての①〜③との相性ですが、3つの内定先を比較したときに、5点満点×3項目(アクセス・待遇・成果の上げやすさ)でざっくり見ると
①→アクセス5、待遇4、成果の上げやすさ5 =14点
②→アクセス3、待遇3、成果の上げやすさ4 =10点
③→アクセス3、待遇3、成果の上げやすさ4 =10点
このような差があると感じました。10年、20年と働く前提で、一生の仕事先として見るならば、足し算でなく掛け算くらいの差が生まれるかもしれません。つまり、
①→5×4×5 =100点
②→3×3×4 =36点
③→3×3×4 =36点
上記の数字の差は少々大げさに見えるしれませんが、仕事先との相性が人生にもたらすインパクトはこれぐらい大きいと、多くの求職者さんからお話を聞いてきた中で思います。ただし、これはあくまで相性の点数化です。②がベストの人も、③がベストの人も当然ありえます。
つい先日、久々にTさんへご連絡させていただき、ご様子を伺いました。「これが最後の職場になりそう、なんて贅沢な事を考えながら、色々挑戦しています^^」とのこと。ほっとしつつ、心から嬉しくもあり、引き続きのご活躍をお祈りする旨をお伝えしました。転職の流れの一例をご紹介し、転職をご検討されている方々に何かご参考になればと前・後編にわたり記述して参りましたが、いかがでしたか。
ベストな縁を見つけるのは本当に大変なことです。一生の縁ならば、それは最良の結婚を実現するまでの道のようにより多くの選択肢に向き合う努力が必要になります。複数の内定を比較できたなら、内定先1つ1つとの相性のわずかな差が、長い年月の間に驚くほど大きな差になるかもしれません。お一人での転職活動で、もし選択肢の不足に悩まれることなどがありましたら、ぜひ弊社にご相談いただけますと幸いです。尚、サポートは全て無料です。
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