月給が10種類もある!?
働く上でお給料は非常に重要です。働く前にお給料をスッキリ理解した上で始めたいですよね。しかし異業種から介護業界に挑戦されるケースで戸惑いがちなのが介護業界に特有のお給与の構造の複雑さです。項目がいろいろあって、何が何だか分からないということが多いです。そこで今回は、例えばあとから「え!?処遇改善手当ってそうだったの!?」などとならないように、代表的な項目1つ1つをなるべくシンプルに説明していきたいと思います。
ちなみに、最もシンプルな給料は基本給、残業手当、この2つが月給で、基本給×賞与の月数がさらに年収に影響する形ですよね。それが介護の場合は
①基本給
②資格手当
③職務手当
④処遇改善手当
⑤夜勤手当
⑥残業手当
⑦役職手当
⑧住宅手当
⑨扶養手当
⑩通勤手当
以上が月給で、別途賞与
およそこれだけ種類がありますので面食らいます。他に施設によっては被服手当、委員会手当、年末年始手当、などがありえますが、今回の説明では省略しています。たくさん種類はありますが、一度説明を見れば理解しやすいものでもありますので、ご安心ください。
①基本給
・新卒での基本給は、最終学歴でパターンを設けている法人(介護施設)が多い。例えば高卒以下は基本給15万円、短大・専門卒は16万円、4年制の大卒は17万円でそれぞれスタート、のような形。高学歴を優遇したいわけでなく、年次昇給があることを踏まえると、金額の差を設けるのは妥当と考えることもできる。(最終学歴での変動が無い法人もある。)
・転職で入社した場合、前職までの勤続年数を考慮してアップしてくれる場合がある。(前歴加算)ただし「フルタイムでの勤務歴に限る。夜勤業務も含めた介護の入所施設での勤務歴に限る。総年数の3分の2を整数で加算。介護福祉士を取得してからの年数に限る。直近15年以内の勤務歴に限る」などの条件を設けている場合もある。
また、中には年齢給という概念で、年齢が高くなるにつれて基本給が高くなる法人もある。ただしかなり少数派。
・年次昇給で毎年、数千円ずつアップしていく場合が多い。2,000円〜5,000円というケースが一般的。施設によって違う。仮に毎年5,000円ずつアップすれば、スタートが基本給15万円でも、10年後に基本給だけで20万円になるので、年次昇給の有無や額は、非常に重要。
②資格手当
・初任者研修を持っていたら毎月3,000円、介護福祉士を持っていたら毎月1万円、というような形で、資格のレベルによってアップする制度の施設が多い。金額の設定は施設によって様々。
・この資格手当を賞与の計算に組み込んでいる施設もたまにある。(基本給+資格手当)×年4ヶ月=賞与、のような形。
・介護支援専門員(ケアマネ)を取得すると毎月3万円、というような介護福祉士よりも高額な資格手当をケアマネに設定している施設もあるが、ケアマネの資格を持っているだけでは対象にならず、ケアマネの役職に就かないと対象にならない、という場合が多い。
しかも介護業務および夜勤に入らない形であれば、処遇改善手当や職務手当、夜勤手当がなくなり、介護職よりも月給は下がる場合もある。資格手当以外にケアマネに役職手当を設定し、月給が下がりすぎないようにしている施設もある。
③職務手当(業務手当)
・職務手当(業務手当)は施設によって設定している場合と、無い場合がある。特に行政からの指示があるわけでもなく、自由な項目。
・位置づけも様々。事務職と介護職を区別するために、介護業務に入っている場合に毎月○円、のような形が割と一般的。
・この職務手当(業務手当)に、④の処遇改善手当を充てている施設もある。職務手当が月3万円、ただし処遇改善手当は無い、のような形。
④処遇改善手当
・国から介護職の待遇を改善するために支給されているお金を、各施設の裁量で介護職員の給与に反映している。職員に全部配分しなさい、というルールはあるが、均等に配分しなさい、というルールは無いため、勤続年数で傾斜をつけて配分している施設もあるなど様々。
・特養や老健などの、大きくて介護度の高い施設のほうが国からたくさん支給してもらいやすいので、均等に配分している場合で月3万円〜4万円など高額になる場合がある。ただし必ず毎月支給しなさいというルールはなく、年に1回か2回でまとめて支給している法人もある。
・国の臨時的な制度なので、国の財政が傾いたら、制度が撤廃される可能性もある。(当面なくならないだろうとは言われている)
・勤務した初月から支給している施設もあるが、基本、働いた2ヶ月後にズレて国から支給されるものなので、給与への反映も2ヶ月後にしている施設も多い。
・特定処遇改善という「勤続10年以上の介護福祉士」が概ね対象となる関連制度もあるが、制度がかなり複雑で、しかも施設によって扱いがかなりマチマチなので、月8万円も月給がアップすることがありますよ!などと聞くことがあるが正確ではない。
⑤夜勤手当
・夜勤に1回入るたびに付く手当で、1回5,000円か6,000円のところが多い。16時〜翌朝10時の勤務で、間に2時間休憩。これが月5回くらいシフトに組み込まれるイメージ。1回5,000円ならば月25,000円になる。
・夜勤が夜22時〜翌朝7時(休憩60分)というような短いケースもあり、この場合の手当は3000円程度としている施設もある。短い夜勤でも1回5000円の施設もある。
・長い夜勤をロング夜勤、短い夜勤をショート夜勤という表現をする場合もある。
⑥残業手当
・基本給から1時間あたりの時給が計算されて、その単価×月の残業時間が計算されて、残業手当が支給されるケースが多い。なので基本給が高い人ほど残業手当が大きく支給されやすい。
・みなし残業手当という制度がある場合は、例えば月に20時間までの残業代としてあらかじめ確定で支給額を決めておき、20時間以内であれば計算無しで定額が支給されるというような形。原則、定められた○時間を超えた場合は超過分が計算されて支給される。
⑦役職手当
・ユニットリーダー、フロアリーダー、主任、課長、生活相談員、ケアマネージャー、看護師長、副施設長、施設長などの役職に手当を設けているケース。法人、施設によって制度の形は様々。金額も様々。
・役職手当を賞与の計算に入れている法人もある。例えば(基本給20万円+役職手当5万円)×賞与3.0ヶ月=年75万円の賞与、というような形。決して少なくない数の企業で採用されている考え方であり、役職を目指して頑張りたいと考えている場合は、事前に確認されることをおすすめ。
⑧住宅手当
・制度の有無が法人によってマチマチ。ざっくりだが全体の1割から2割くらいの法人にある制度という所感。
・最もよくある形は、自身名義の賃貸住宅に住んでいれば、月額2万円程度の住宅手当が出るというもの。賃貸でなく分譲だと支給されない場合がほとんど。試用期間は支給の対象外というケースも多いので、注意が必要。
⑨扶養手当
・配偶者や子を自身の扶養家族としている場合などに、配偶者5,000円、子3,000円などの月額手当が出る制度。法人独自の制度であり、ルールは様々。
・子は上限年齢が決まっている場合がよくあり、18歳までという場合を多く見かける。また、制度の見直しでこの手当を無くす企業もたまに見かける。
・制度の有無が法人によってマチマチ。ざっくりだが全体の1割から2割くらいの法人にある制度という所感。⑧の住宅手当と同程度の割合と感じる。
⑩通勤手当
・月額上限30,000円で、実費支給(かかった分を支給)というような法人が多い。公共交通機関を使う場合で、2km未満は支給の対象外としているところが多い。例えば自宅から最寄り駅まで1.7kmだと、バスに乗ってもバス代は出ないし、自転車を使っても駐輪場代は自己負担、というような形。距離に関係なく自転車通勤に数千円の手当を出す法人もある。
・車通勤の可否は施設によって異なる。また、車通勤OKでも、施設の無料駐車場を使える場合と、そうでない場合がある。数千円の月額駐車場代を給与天引きされる場合や、付近の駐車場を自分で契約する場合などである。余談だが、施設から駐車場までの距離も様々なので、事前の確認が必要。
賞与について
・基本給×年間賞与月数というのが一般的。ただし、法人によっては基本給以外の例えば業務手当、資格手当、役職手当なども計算のベースに含める場合もあるため、確認が必要。
・株式会社の運営する有料老人ホームでは概ね年間2ヶ月、社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームでは概ね年間4ヶ月というふうに、社会福祉法人のほうがやや賞与の月数が多い傾向がある。医療法人が運営する老人保健施設については中間ないし、やや多めの傾向。
・入社して最初の賞与については、寸志あるいはゼロ円というなる場合が多い。なぜなら例えば夏の賞与が2021年7月に支給、冬の賞与が2021年12月に支給として、2020年10月から2021年3月末までの6ヶ月間に勤務していたら2021年夏が満額支給、2021年4月から同9月末に勤務していたら2021年冬が満額支給、という計算ルールにしている法人が多いのが理由。よって例えば4月入社なら最初の夏の賞与はゼロ円となる。
処遇改善一時金
・求人票に書かれず、法人も事前に説明し忘れるケースが多いのがコレ。④の処遇改善は毎月支給される分で、その際に余った分を年に1回か2回、まとめて分配するためのもの。(例外は以下)
・金額は施設単位で違う場合が多く、大小マチマチだが、年間で見てフルタイム1人あたり10万円前後になることもある。尚、④の処遇改善手当を毎月支給にせず、この一時金という形でまとめて支給している法人もあり、その場合は年額20万円を超え、賞与に加算したり、春の賞与として3月に支給する法人もある。
10年後のお給料を意識する
団塊の世代が2021年の時点で72歳〜75歳なので、2030年ごろに向けて介護の需要はピークを迎えるだろうな、という大まかな予想が立てられます。介護施設数も増えるでしょう。一方で、10年後を山の頂上として、その後はゆるやかに介護の利用者は減っていく予想もできます。そうなると介護施設の廃業も増えるはずです。
日本各地で空っぽの介護施設がたくさんある状況にならないように、政府は在宅介護への「訪問介護」が増えるように制度をちょっとずつ「訪問介護の優遇」に変える工夫もしているようです。こういった介護業界の変化がお給料へ影響を与えることもしばしばあります。
また、年次昇給(2年目、3年目と継続したときに毎年上がる。主に基本給の昇給)が影響大の業界で、長く1箇所で続けていた人が転職するとお給料が下がることが多いので、10年後に介護全体の需要が縮み始めたときに、ちゃんと力強く続いている法人だろうか、という観点で考える必要も少しあります。
弊社では、そういった長い目で見ても、最後の転職をしていただけるようにと日々、明るく真剣なサポートを進めています。
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